DAY 11 – 引っ越し作業

国際免許などは取ってきていないし、当たり前だが車もない。
引っ越し作業は、荷物が多いので二日かけて行う。
ステイ先は部屋に鍵がかけられるようになっており、家に住んでいる人間もみな顔見知りだ。
だいたい良い人たちなのはわかっているので、荷物を半分おいていってもおかしなことにはならないだろう。
これから住むのはシェアハウス。
家主は良い人そうだったが、なにせこちらにきて初めての契約。
どこか不安な気持ちを残しつつ、旅行鞄と必要な荷物を持って向かう。
ギターはステイ先に置いてきたが、机にワイヤー錠でくくり付け、部屋にも鍵をしたから大丈夫だろう。
家に着くと、家主に迎え入れられる。
今日もフレンドリーだ。
昨日メモのように書いてくれた契約内容をパソコンで打ち直し、印刷した正式な契約書を用意してくれていた。
ハウスルールや敷金の返却有無、インターネット使用のことなど、細かいことがしっかりと書かれているので安心感がある。
読み終わると二人でサインをして、同じ契約書を一枚ずつ保管する。
ちゃんとしている。
今月分の家賃を支払うと、この家のキッチンや家電の使い方をひとつずつ丁寧に教えてくれた。
それだけではない。
在留登録がまだだろうと、登録に必要な住所証明に関わる書類も一式用意してくれていたのである。
この国に来て、初めて人から親切にされた気持ちになり、嬉しかった。
嬉しいことはもう一つある。
この家ではキッチンを使えるので、節約のためにとリンゴばかりを齧る生活は終わりにできそうだ。